2016年03月15日
元JRA厩務員のグルーミングインストラクター 川越靖幸さんの手入れ曳き馬講習
元JRA厩務員のグルーミングインストラクター、川越靖幸さんの手入れ曳き馬講習が開催されました
川越さんは過去に美浦の藤沢厩舎に所属しゼンノロブロイなど、GⅠ4勝、重賞14勝をあげた馬たちの担当厩務員をされていました
2005年にゼンノロブロイがイギリスのGⅠレース「インターナショナルステークス」に出走する際、「人馬の一体感」を最も養成できた厩務員に対して贈られる『ベストターンドアウト賞』を受賞
この賞を海外遠征で受賞した日本の人馬は川越さんとゼンノロブロイが初めてです
今回の手入れ講習のモデルになってくれるのはアブソリュートです
まずはつかう道具を教えてもらいます 特別な道具はなく、ごく普通の手入れ道具たちです
顔の手入れ、海外では「日本の馬は顔が(手入れが行き届かず)汚い」と言われていたそうです
次は毛ブラシを使います 道具同士の使い方、動かし方に特徴があります
そして常日頃から頻繁に素手で馬に触れ、手や指先から馬のコンディションを知り、気づいたときに即対応をします
たっぷり時間をかけて一度に磨きあげるのではなく、普段からまめに手を入れておくことで、レース前も手入れ時間はかからないのだそうです
厩務員だったころは1日に同じ馬を3回、4回手入れをすることも
手入れしているとちょっかいを出してくるアブソリュート、しかし川越さんは巧みにあしらいながらどんどん手を動かしていきます
人が笑顔でいることもですし、あとは声をけ続ける事でどんな馬でもその人を覚えてくれますし、必ず落ちついて大人しくなっていきます」
馬の気持ちを不快にさせず大事にすることで、手入れは馬にとって安心することができる時間にかわります
フケや汗など汚れが残りやすいところのブラシの動かし方や動作を教わりました
川越さんは流れるような動きの中で手を止めることなく、絶えず両手を動かし続けます
しかし動かしているのは腕だけでなく、自分の体全体をつかって馬を手入れしているのがわかります
道具の扱いかた、無駄のない所作に川越さんが培ってきた技術や馬への想い、はぐくんできた馬たちの姿が垣間見えます
川越さんのブラッシングで磨きあげられたアブソリュート、先ほどより数段光っています
ピッカピカのとぅるんとぅるんおもわず触ってみたくなる毛艶です
「お尻をきれいにしてあげると馬と人の距離が縮まる」と教わったと話す川越さん
肛門から股の深いところまでタオルをきれいにしながらガシガシと拭いていきました
「何回ブラシをかけても汚れたままではフケが移動するだけ」 そこでキーになるのがもう片方に持った金ブラシ
道具の握り方も手とり足とり教えてくださるので
大注目
「【広い範囲を大きくかける】ではなくて【小さい範囲を細かく】、部分的に順番に」
しっかりと力を入れて逆立てていくと毛とブラシとの抵抗力がかかり、川越さんのような動きをなかなか真似することができません
しかし後半には加藤くんもコツを教わりながら少しずつ体全体を動かせるようになってきました
どちらも最初からクシなどの道具は使わずに自分の手をつかってほぐし整えていきます
「声をかける、体に触れる、気になったらすぐに整える 馬が自分の相棒、パートナーだと思えば当然のことですね」
一通りの手入れが終わったあとも、気になったところがあるとすぐさまタオルでサッと拭きとります
手入れはスキンシップであり、人馬一体に近づく一番身近な日々の日課です